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2025/10/14

細胞増殖法則における大域的制約原理

論文タイトル
Global constraint principle for microbial growth laws
論文タイトル(訳)
細胞増殖法則における大域的制約原理
DOI
10.1073/pnas.2515031122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.40
著者名(敬称略)
山岸 純平 畠山 哲央
所属
東京科学大学 未来社会創成研究院 地球生命研究所
著者からのひと言
細胞の増殖速度がどのようにして決まるのかというのは、非常に古くからある問題です。この論文で議論しているMonod則とLiebigの最小律は、それぞれ約80年前と約180年前に提唱された経験則です。我々の論文では、これらの古くからの経験則を統一する新たな原理を理論的に発見しました。古くから知られ、当たり前のように思われている経験則の中にこそ、研究のフロンティアがあると、我々は考えています。

抄訳

生物の複雑な挙動を理解するには、種や分子の詳細に依存しない普遍的な法則を見出す必要がある。細胞増殖の古典的法則であるMonod則は、単一基質に対する飽和的成長を記述する経験則だが、実際の細胞成長は多数の代謝反応と資源制約の協調によって決まる。本研究では、細胞内資源配分の一般的理論に基づき、細胞成長を支配する普遍原理として「大域的制約原理」を提唱した。この原理は、ある栄養素を増やすと他の資源が成長を制約する要因となり、その制約の数が段階的に増えるため、栄養濃度に対する増殖曲線が単調増加かつ凹関数となることを示すものである。さらに、この枠組みは複数の栄養素に対する増殖依存性を統一的に扱い、Monod則とLiebig最小律という二つの古典的法則を統合する。加えて、その概念を視覚的に表すものとして、Terraced Liebig’s barrel(リービッヒの段々樽)という新たなモデルを提示した。

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