抄訳
海洋性微細藻類による一次生産と、原核生物による一次生産物の消費は、生物地球化学的循環に大きく貢献しています。微細藻類はしばしばウイルスに感染しており、感染細胞では、ウイルスは自身の複製や代謝産物の生成のため、宿主の代謝を制御します。しかし、微細藻類の感染細胞が原核生物群集に与える影響については、十分には解明されていませんでした。本研究では、世界的に分布し有害藻類ブルームを形成するラフィド藻類Heterosigma akashiwoの感染細胞の溶藻液(感染終盤に細胞が溶解するときに放出される液体画分)が、原核生物群集に及ぼす影響を調査しました。その結果、H. akashiwoの感染細胞内での生化学的特性の変化が、溶藻液中に含まれる、特定の有機化合物を代謝できる一部の細菌群の増殖を促進することが示唆されました。さらに、これらの細菌群には魚類の病原菌も含まれていたことから、H. akashiwoへのウイルス感染が、海洋生態系における高次消費者に対しても間接的に影響を与える可能性があると考えられました。