抄訳
体細胞核移植 (SCNT) 技術は移植核と同一のゲノム情報を持つ個体を作出する手法だが、SCNT胚の出生率は5 %未満と非常に低い。本研究ではSCNT胚の低発生効率の原因を明らかにするために、着床前胚発生期に重要な細胞質因子の1つであるオートファジーに着目して研究を行った。蛍光ライブイメージングによるオートファジー活性測定によって、SCNT胚は受精胚と比べ後期2細胞期以降のオートファジー活性が低いことが明らかとなった。さらに、RNA-seq解析によってSCNT胚ではオートファジーを抑制的に制御するmTORC1の異常な活性化が起こっていることが示唆され、mTORC1を阻害することによってSCNT胚のオートファジーを活性化させることに成功した。本研究によって、SCNT胚はエピゲノムだけでなく細胞質因子についても受精胚とは異なる状態にあることが明らかとなり、非ゲノム経路の調節がSCNT研究の新たなアプローチになり得ることが示された。