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2025/10/20

マウス体細胞核移植胚におけるmTORC1によるオートファジーの抑制

論文タイトル
mTORC1-dependent suppression of autophagic activity in somatic cell nuclear transfer mouse embryos
論文タイトル(訳)
マウス体細胞核移植胚におけるmTORC1によるオートファジーの抑制
DOI
10.1530/REP-25-0338
ジャーナル名
Reproduction
巻号
Reproduction REP-25-0338
著者名(敬称略)
建部 貴輝、井上 貴美子 他
所属
理化学研究所 バイオリソース研究センター(BRC)統合発生工学研究開発室
著者からのひと言
SCNT胚の研究は主に移植核のリプログラミング異常に着目したものが多く、細胞内タンパク質や細胞小器官などの細胞質因子が低発生率に関与しているのかは不明でした。本研究は、SCNT胚のオートファジー活性動態が受精胚を模倣できているのか、発生異常と関連性があるのか明らかにすることを目的としました。この研究では、4細胞期のオートファジー活性がSCNT胚の胚盤胞発生と関連していることが示されました。胚移植の前に良質な胚を選別することで、クローン作出効率の向上が期待されます。

抄訳

体細胞核移植 (SCNT) 技術は移植核と同一のゲノム情報を持つ個体を作出する手法だが、SCNT胚の出生率は5 %未満と非常に低い。本研究ではSCNT胚の低発生効率の原因を明らかにするために、着床前胚発生期に重要な細胞質因子の1つであるオートファジーに着目して研究を行った。蛍光ライブイメージングによるオートファジー活性測定によって、SCNT胚は受精胚と比べ後期2細胞期以降のオートファジー活性が低いことが明らかとなった。さらに、RNA-seq解析によってSCNT胚ではオートファジーを抑制的に制御するmTORC1の異常な活性化が起こっていることが示唆され、mTORC1を阻害することによってSCNT胚のオートファジーを活性化させることに成功した。本研究によって、SCNT胚はエピゲノムだけでなく細胞質因子についても受精胚とは異なる状態にあることが明らかとなり、非ゲノム経路の調節がSCNT研究の新たなアプローチになり得ることが示された。

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