抄訳
圧力は化学平衡や反応速度に影響を与える重要な熱力学的パラメータであるが、複雑な細胞内メカニズムへの影響については未だ十分に解明されていない。本研究では、出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae の新規小胞体(ER)膜タンパク質Ehg1(別名May24)が、高水圧(約25 MPa)下でトリプトファン輸送体Tat2を安定化させ、細胞増殖を維持する役割を果たすことを明らかにした。Ehg1は表層ER(cER)に局在し、細胞膜上のTat2とin transで物理的に相互作用していた。さらに、Ehg1はTat2を細胞膜のマイクロドメインである脂質ラフトへ効率的に分配させることで、その膜局在を維持する中心的な役割を担っていた。この安定化は、cERと細胞膜の接触に依存しており、高水圧下での栄養源輸送の効率化に不可欠である。実際、こうした接触を欠くΔtether株およびΔ-super-tether株では、Tat2の顕著な不安定化が認められた。これらの知見は、高圧環境下における微生物の栄養輸送体の維持機構を新たに示すものであり、極限環境への微生物適応の理解を深める手がかりとなる。