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2025/10/20

Ehg1/May24は高水圧環境下でアミノ酸輸送体の脂質ラフト局在を促進し、その安定化を担う

論文タイトル
Ehg1/May24 stabilizes yeast amino acid permease by facilitating its localization to lipid rafts under high hydrostatic pressure
論文タイトル(訳)
Ehg1/May24は高水圧環境下でアミノ酸輸送体の脂質ラフト局在を促進し、その安定化を担う
DOI
10.1091/mbc.E25-02-0067
ジャーナル名
Molecular Biology of the Cell
巻号
Molecular Biology of the CellVol. 36, No. 8
著者名(敬称略)
加藤 祐介 阿部 文快 他
所属
青山学院大学理工学部 化学・生命科学科
著者からのひと言
高圧は深海に普遍的に存在する熱力学的な要因ですが、実はヒトの運動時にも、膝や股関節には数百気圧(数十MPa)に達する圧力がかかっています。このような大きな外圧に対して、細胞が分子レベルでどのように応答しているのかについては、いまだ十分に解明されていません。本研究では出芽酵母をモデルとして、小胞体膜タンパク質Ehg1が高圧下でアミノ酸輸送体の機能を維持し、栄養の取り込みと生育を可能にする仕組みを明らかにしました。Ehg1のホモログはヒトにも存在していることから、本研究は細胞が力学的負荷に適応する分子メカニズムの理解を深めるうえで、医学的にも重要な手がかりとなることが期待されます。

抄訳

圧力は化学平衡や反応速度に影響を与える重要な熱力学的パラメータであるが、複雑な細胞内メカニズムへの影響については未だ十分に解明されていない。本研究では、出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae の新規小胞体(ER)膜タンパク質Ehg1(別名May24)が、高水圧(約25 MPa)下でトリプトファン輸送体Tat2を安定化させ、細胞増殖を維持する役割を果たすことを明らかにした。Ehg1は表層ER(cER)に局在し、細胞膜上のTat2とin transで物理的に相互作用していた。さらに、Ehg1はTat2を細胞膜のマイクロドメインである脂質ラフトへ効率的に分配させることで、その膜局在を維持する中心的な役割を担っていた。この安定化は、cERと細胞膜の接触に依存しており、高水圧下での栄養源輸送の効率化に不可欠である。実際、こうした接触を欠くΔtether株およびΔ-super-tether株では、Tat2の顕著な不安定化が認められた。これらの知見は、高圧環境下における微生物の栄養輸送体の維持機構を新たに示すものであり、極限環境への微生物適応の理解を深める手がかりとなる。

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