抄訳
NAD(P)(H)は生物のエネルギー代謝やストレス応答に関わる重要な補酵素である。植物の葉緑体局在型NADキナーゼ(NADK2)は、光合成に必要なNADP⁺を供給する酵素であり、NADK2欠損変異体(nadk2)は成長不良や葉の黄化を示す。本研究ではnadk2の表現型を回復する復帰変異体nkr1の原因遺伝子としてAt3g18500 (CCR4C)を同定した。CCR4Cは葉緑体に局在し、NADP(H)をNAD(H)に変換するホスファターゼ活性を持つことが組換えタンパク質を用いた実験より示された。さらに、ccr4c変異体はNAD(P)(H)バランスの変化と活性酸素ストレスへの耐性を示した。これらの結果から、CCR4C は葉緑体内のNAD(P)(H)バランスを制御する新たな因子であり、植物が光合成やストレス応答をどのように調節しているのかを理解するうえで、重要な知見を与える。