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2025/11/06

放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスの胞子嚢開裂において2つの多糖加水分解酵素が胞子嚢マトリクスを分解することで胞子を放出させる

論文タイトル
Two glycoside hydrolases decompose the sporangium matrix to release spores during sporangium dehiscence in Actinoplanes missouriensis
論文タイトル(訳)
放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスの胞子嚢開裂において2つの多糖加水分解酵素が胞子嚢マトリクスを分解することで胞子を放出させる
DOI
10.1128/mbio.02682-25
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
光山 京太 手塚 武揚 大西 康夫 他
所属
東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用生命工学専攻 醗酵学研究室
著者からのひと言
一部の放線菌は、バクテリアでは極めて珍しい多細胞の構造体である胞子嚢を形成します。我々が研究対象としている放線菌は、数百の胞子を内包する胞子嚢を形成し、胞子嚢開裂によって胞子を水中に放出します。胞子はべん毛を持ち、遊走子となって水中を高速で運動します。我々は、このような複雑な形態分化の分子機構に興味をもち、長年研究しています。本論文は一連の研究の1つであり、胞子嚢の構成成分と胞子嚢開裂の分子機構について新たな知見を与えるものです。

抄訳

放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスは、休眠胞子が詰まった胞子嚢を形成します。胞子嚢の表層は多層の胞子嚢膜で構成され、内部は胞子に加えて胞子嚢マトリクスで満たされています。胞子嚢は水がかかると胞子嚢膜が破れ、胞子を放出します(胞子嚢開裂)。今回、以前の解析で胞子嚢開裂時に転写が増大することが判明していた2つの遺伝子gimAgimBの機能解析を行いました。gimAgimBはいずれも多糖加水分解酵素をコードしています。gimAgimBの二重破壊株は形態的に正常な胞子嚢を形成しましたが、この胞子嚢は開裂条件において胞子嚢膜が破れるものの、胞子嚢マトリクスが分解されず胞子が放出されませんでした。胞子嚢膜が破れた状態の胞子嚢に、大腸菌で生産させ、精製したGimAまたはGimBタンパク質を添加すると、胞子嚢マトリクスが分解され、胞子が放出されました。また、別の遺伝子破壊実験により、gimBに隣接する7遺伝子で構成される遺伝子クラスターが胞子嚢マトリクスの合成に必要であることが判明しました。これまで胞子嚢マトリクスの成分はわかっていませんでしたが、今回、その主要成分がオリゴ糖を繰り返し単位とする多糖であること、胞子嚢開裂時にこの多糖が分解されることで胞子が水中に放出されることが示されました。

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