抄訳
放線菌アクチノプラネス・ミズーリエンシスは、休眠胞子が詰まった胞子嚢を形成します。胞子嚢の表層は多層の胞子嚢膜で構成され、内部は胞子に加えて胞子嚢マトリクスで満たされています。胞子嚢は水がかかると胞子嚢膜が破れ、胞子を放出します(胞子嚢開裂)。今回、以前の解析で胞子嚢開裂時に転写が増大することが判明していた2つの遺伝子gimAとgimBの機能解析を行いました。gimAとgimBはいずれも多糖加水分解酵素をコードしています。gimAとgimBの二重破壊株は形態的に正常な胞子嚢を形成しましたが、この胞子嚢は開裂条件において胞子嚢膜が破れるものの、胞子嚢マトリクスが分解されず胞子が放出されませんでした。胞子嚢膜が破れた状態の胞子嚢に、大腸菌で生産させ、精製したGimAまたはGimBタンパク質を添加すると、胞子嚢マトリクスが分解され、胞子が放出されました。また、別の遺伝子破壊実験により、gimBに隣接する7遺伝子で構成される遺伝子クラスターが胞子嚢マトリクスの合成に必要であることが判明しました。これまで胞子嚢マトリクスの成分はわかっていませんでしたが、今回、その主要成分がオリゴ糖を繰り返し単位とする多糖であること、胞子嚢開裂時にこの多糖が分解されることで胞子が水中に放出されることが示されました。