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2025/11/12

担子菌菌糸が媒介する細菌の移動と生存が木質リグニンの分解を促進する

論文タイトル
Fungus-mediated bacterial survival and migration enhance wood lignin degradation
論文タイトル(訳)
担子菌菌糸が媒介する細菌の移動と生存が木質リグニンの分解を促進する
DOI
10.1128/aem.01347-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
亀井 一郎 他
所属
宮崎大学農学部
著者からのひと言
リグニンは木材の主要構成成分の一つで、その生分解は主に白色腐朽菌と呼ばれるきのこの仲間が担っています。一方で、きのこによって分解されている木材(腐朽材)の内部には多くの細菌類も共存していることが分かっていますが、その役割は不明で、本研究ではその一端を明らかにできました。白色腐朽菌と細菌との物理的・代謝的な相互作用を明らかにし、人為的に再構築できれば、木質バイオマスの有価物への変換(バイオリファイナリー)に応用できると考えています。

抄訳

木材腐朽菌と共存細菌との相互作用は、木材分解の重要な因子の一つとして認識されつつあるが、その具体的なメカニズムは未解明である。本研究では、白色腐朽菌であるカワラタケ(Trametes versicolor)が優占する腐朽材から、リグニン生分解生成物の一つであるバニリン酸を資化できる細菌を分離し、木材環境における白色腐朽菌と細菌との共存関係と機能的相互作用を調べた。その結果、バニリン酸資化性細菌は白色腐朽菌の菌糸伸長に伴い木粉培地上で分散し、白色腐朽菌菌糸の存在下でのみ長期的に生存でき、木粉の分解とリグニン分解の両方を促進することが明らかとなった。また、共培養系では白色腐朽菌単独培養系と比較して、木材の分解により生成・蓄積するグルコースおよびバニリン酸の濃度が低く保たれていた。これらの結果は、白色腐朽菌により生成するグルコースとバニリン酸を細菌が消費することで、Carbon catabolite repressionを抑制し、リグニン分解酵素の生産を促している可能性を示唆している。

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