抄訳
木材腐朽菌と共存細菌との相互作用は、木材分解の重要な因子の一つとして認識されつつあるが、その具体的なメカニズムは未解明である。本研究では、白色腐朽菌であるカワラタケ(Trametes versicolor)が優占する腐朽材から、リグニン生分解生成物の一つであるバニリン酸を資化できる細菌を分離し、木材環境における白色腐朽菌と細菌との共存関係と機能的相互作用を調べた。その結果、バニリン酸資化性細菌は白色腐朽菌の菌糸伸長に伴い木粉培地上で分散し、白色腐朽菌菌糸の存在下でのみ長期的に生存でき、木粉の分解とリグニン分解の両方を促進することが明らかとなった。また、共培養系では白色腐朽菌単独培養系と比較して、木材の分解により生成・蓄積するグルコースおよびバニリン酸の濃度が低く保たれていた。これらの結果は、白色腐朽菌により生成するグルコースとバニリン酸を細菌が消費することで、Carbon catabolite repressionを抑制し、リグニン分解酵素の生産を促している可能性を示唆している。