抄訳
多くの国で最近数十年間に小さい甲状腺癌が急速に増え大きい臨床課題となっている。世界に先立ち、1993年に隈病院で、1995年に癌研病院で甲状腺微小乳頭癌に対する積極的経過観察臨床研究が開始され、良好な結果が報告された。積極的経過観察群において甲状腺癌関連死亡例はなく、腫瘍進行因子は若年齢と血清TSH高値であった。甲状腺微小癌の手術は容易ではあるが、経験豊富な外科医が行っても、永久的な反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症などのリスクを伴った。積極的経過観察群と即時手術群に予後に有意差はなく、前者より後者の方が有害事象の発生率が高かった。種々の理由で経過観察から手術に転換した群の予後および有害事象の発生率は、直ちに手術群と差がなかった。積極的経過観察群は、即時手術群より身体的QOLが良好であった。現在、積極的経過観察は甲状腺微小乳頭癌に対する優れた初期治療戦略と考えられている。