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2025/11/12

甲状腺微小乳頭癌に対する積極的経過観察

論文タイトル
Active surveillance for small papillary thyroid carcinoma
論文タイトル(訳)
甲状腺微小乳頭癌に対する積極的経過観察
DOI
10.1530/ERC-25-0287
ジャーナル名
Endocrine-Related Cancer
巻号
Endocrine-Related Cancer ERC-25-0287
著者名(敬称略)
筆頭執筆者:伊藤 康弘、連絡著者:宮内 昭
所属
医療法人 神甲会 隈病院 外科
著者からのひと言
種々の画像検査の進歩と普及によって小さい甲状腺癌の発見が急増した。エコーガイド下細胞診にて3mmの乳頭癌でも診断できる。一方、剖検にて甲状腺には小さい癌が高頻度で報告されている。著者らは微小乳頭癌を診断手術することに疑問を抱き、1993年に積極的経過観察臨床研究を世界で始めて開始し、2年後に癌研病院でも開始した。32年を経て、2025年アメリカ甲状腺学会甲状腺癌取扱規約に積極的経過観察が採用された。日本発の患者さんの為になる情報である。

抄訳

多くの国で最近数十年間に小さい甲状腺癌が急速に増え大きい臨床課題となっている。世界に先立ち、1993年に隈病院で、1995年に癌研病院で甲状腺微小乳頭癌に対する積極的経過観察臨床研究が開始され、良好な結果が報告された。積極的経過観察群において甲状腺癌関連死亡例はなく、腫瘍進行因子は若年齢と血清TSH高値であった。甲状腺微小癌の手術は容易ではあるが、経験豊富な外科医が行っても、永久的な反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症などのリスクを伴った。積極的経過観察群と即時手術群に予後に有意差はなく、前者より後者の方が有害事象の発生率が高かった。種々の理由で経過観察から手術に転換した群の予後および有害事象の発生率は、直ちに手術群と差がなかった。積極的経過観察群は、即時手術群より身体的QOLが良好であった。現在、積極的経過観察は甲状腺微小乳頭癌に対する優れた初期治療戦略と考えられている。

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