抄訳
菊池藤本病(Kikuchi–Fujimoto disease:KFD)は若年女性に多い壊死性リンパ節炎で、通常は自然軽快する良性疾患である。本症例は、3回のKFDエピソードを経験した思春期男児が、15か月後に急性心筋梗塞(AMI)を発症した極めて稀な例である。3回目のKFDではPET-CTで頸部から縦隔、腹部に至る広範なリンパ節に集積を認めたが自然軽快した。その後、胸痛で受診した際に、冠動脈造影で左前下行枝・回旋枝・右冠動脈に高度狭窄を確認し、経皮的冠動脈インターベンションを施行した。脂質異常や血管炎などの既知の危険因子は認めず、KFDによる炎症が早期動脈硬化に関与した可能性が示唆された。KFDは一般に予後良好だが、再発例や広範リンパ節病変を伴う例では長期的な心血管リスクに注意が必要である。