抄訳
好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)は、活性化した好中球が自身のDNAとタンパク質を細胞外へ放出する反応で、貪食とは真逆ともいえる細胞応答である。NETsの発見当初は病原細菌を絡めとる生体防御機構の一つとして認識されたものの、非感染性の疾患でも見出されるようになり、炎症の持続や組織傷害を誘発することで各種疾患の形成に関わる要因の一つとして捉えられている。NETsは血栓や動脈硬化といった血管病変でも形成されるが、リポタンパク質の影響を含めて解析された報告は少ないことから、リポタンパク質と好中球NETsの相互作用の寄与については未解明の点が多く残されている。本論文では、超遠心法によるヒト末梢血からのLDL分画方法、HL-60細胞の分化誘導による好中球様細胞の調製、そしてLDL共存下で作成したNETsを回収してヒト大動脈血管内皮細胞に作用させる一連の方法を紹介する。本手法がリポタンパク質や好中球NETsの内皮細胞への効果の探索に利用され、新たな循環器系疾患の機序の解明に繋がることが期待される。