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2025/12/09

わが国の伝統食・奈良漬の発酵を担う好エタノール性乳酸菌 Fructilactobacillus fructivorans

論文タイトル
Ethanolphilic lactic acid bacterium Fructilactobacillus fructivorans as the key microorganism for fermentation of narazuke, a traditional Japanese preserved food
論文タイトル(訳)
わが国の伝統食・奈良漬の発酵を担う好エタノール性乳酸菌 Fructilactobacillus fructivorans
DOI
10.1128/aem.01730-25
ジャーナル名
Applied and Environmental Microbiology
巻号
Applied and Environmental Microbiology Ahead of Print
著者名(敬称略)
吉岡 求 赤坂 直紀 渡辺 大輔 他
所属
奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域微生物インタラクション研究室
著者からのひと言
奈良漬は、酒粕に漬ける漬物というイメージが強い一方、発酵の実態は意外に未解明でした。本研究では、微生物叢解析と再現試験により奈良漬発酵の鍵微生物を特定し、さらに好エタノール性という新しい環境適応戦略を提示しました。伝統的発酵食品には、いまだ解明されていない微生物の世界が広がっています。今回の発見を起点に、様々な発酵食品の品質向上や地域産業の発展につながる研究へと展開していきたいと考えています。

抄訳

奈良漬とは、酒粕に塩漬野菜を繰り返し漬け込んで作る日本の伝統的保存食である。その原型は8世紀に遡るとされ長く日本人に親しまれてきた一方で、微生物による発酵が起こっているかどうかは不明であった。本研究における微生物叢解析の結果、製造工程が進むにつれて最終的に乳酸菌Fructilactobacillus fructivoransが単独優占することを見出した。ラボスケールでの製造試験でも同菌が優占し、2か月の熟成に伴う乳酸増加が確認されたことから、F. fructivoransが奈良漬発酵の主担当菌であることを示した。奈良漬環境はエタノールを含有し微生物にとって過酷なものである。奈良漬由来F. fructivoransは、エタノール存在下で無添加条件より速く増殖する好エタノール性を示し、比較トランスクリプトーム解析により脂肪酸代謝の改変がその原因となっている可能性が示唆された。

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