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2025/12/09

非侵襲性乳酸菌(Lactococcus lactis)ベクターを用いた粘膜DNAワクチンの免疫原性とプラスミド送達経路

論文タイトル
Immunogenicity and plasmid delivery pathways of non-invasive Lactococcus lactis-vectored mucosal DNA vaccination
論文タイトル(訳)
非侵襲性乳酸菌(Lactococcus lactis)ベクターを用いた粘膜DNAワクチンの免疫原性とプラスミド送達経路
DOI
10.1128/iai.00460-25
ジャーナル名
Infection and Immunity
巻号
Infection and Immunity Ahead of Print
著者名(敬称略)
川嶋 更奈 髙橋 圭太 他
所属
岐阜薬科大学感染制御学研究室
著者からのひと言
非侵襲性の細菌が、どのように宿主細胞へ遺伝子を届けるのか?この疑問に対し、本研究では「貪食作用」が主要ルートであることを細胞レベルで実証しました。単にワクチン効果を見るだけでなく、細菌と宿主免疫系の相互作用を理解する上でも興味深い結果だと考えています。安全性が高い乳酸菌ベクターの改良や、新たな経鼻ワクチン戦略の設計に資する基礎的知見として、ぜひご一読いただければ幸いです。

抄訳

粘膜DNAワクチンは、病原体の侵入部位である粘膜面において免疫を誘導できる有望な手法です。中でも食品微生物として安全性が確立されている非侵襲性の乳酸菌をベクターとして利用する試みは、従来の侵襲性細菌ベクターに代わる安全なプラットフォームとして期待されています。しかし、非侵襲性乳酸菌がどのようにしてプラスミドDNAを宿主細胞へ届け、免疫を誘導するのか、その詳細なメカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。本研究では、モデル抗原発現プラスミドを保持した乳酸菌をマウスに経鼻投与し、その免疫原性と体内での挙動を解析しました。その結果、経口投与と比較して経鼻投与では高い免疫応答が得られ、抗原特異的な血清IgGおよび粘膜IgAの誘導が確認されました。さらに、プラスミド送達メカニズムを検証したところ、プラスミドの主要な受取手は粘膜上皮細胞ではなく、マクロファージなどの貪食細胞である可能性が示されました。本研究成果は、貪食細胞を標的とした非侵襲性乳酸菌ベクターによる新たな経鼻DNAワクチン開発の基盤となる重要な知見です。

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