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2025/12/10

プロスタグランジン E2-EP2/EP4受容体経路は、腫瘍増殖のための腫瘍浸潤Tregに特徴的な表現型を獲得させる。

論文タイトル
Prostaglandin E2-EP2/EP4 signaling induces the tumor-infiltrating Treg phenotype for tumor growth
論文タイトル(訳)
プロスタグランジン E2-EP2/EP4受容体経路は、腫瘍増殖のための腫瘍浸潤Tregに特徴的な表現型を獲得させる。
DOI
10.1073/pnas.2424251122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.49 e2424251122
著者名(敬称略)
松浦 竜真 成宮 周 他
所属
京都大学大学院 医学研究科 創薬医学講座
著者からのひと言
EP4阻害薬は、固形癌に対する治験が幾つか進行中で、最近では、その一つで、胃がんを対象とする第2相治験で有効性を示したと報告されました。また、抗CCR8抗体をはじめとするTI-Treg選択的除去型のがん免疫治療薬の臨床試験も近年続々と進められています。本研究で得られた知見は、これら薬物の臨床開発戦略の構築、例えば、免疫学的特徴に基づく適応がん患者の層別化など、を推進するための科学的基盤を形成すると期待されます。

抄訳

制御性T細胞 (Treg) は、自己免疫疾患などの過剰な免疫反応を抑制し免疫系のバランスを維持するものですが、一方、がんでは、腫瘍組織に強く集積し、がん免疫を抑制してがんの進展を促進します。この腫瘍に浸潤したTreg (TI-Treg) は、活性化を起こす分子を多様に発現し免疫を強く抑制するのが特徴です。この腫瘍に浸潤したTregに特徴的な表現型 (TI-Treg Phenotype) は、ヒトの様々な癌でステージによらず見られ、マウスなどの実験的腫瘍でも観察されることから、腫瘍微小環境には癌の種類を超えて共通のTreg活性化メカニズムが存在すると考えられていましたが、その本体は不明なままでした。本研究は、生理活性脂質のプロスタグランジン(PG) E2 が、腫瘍内の環境因子の一つであり、Treg自身のPGE受容体EP2/EP4サブタイプに作用してTI-Tregに特徴的な表現型を獲得させ、抗腫瘍免疫をより強く抑制して腫瘍の進展を助長していることを見出しました。

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