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2025/12/18

Tppp3は細胞内の微小管構造形成とスフィンゴ脂質恒常性を介して呼吸器繊毛における基底小体の配置と繊毛膜の独立性を制御する

論文タイトル
Tppp3 determines basal body positioning and identity of respiratory cilia via microtubule assembly and sphingolipid homeostasis
論文タイトル(訳)
Tppp3は細胞内の微小管構造形成とスフィンゴ脂質恒常性を介して呼吸器繊毛における基底小体の配置と繊毛膜の独立性を制御する
DOI
10.1073/pnas.2503931122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.49 e2503931122
著者名(敬称略)
酒井 敬史 篠原 恭介 他
所属
東京農工大学大学院工学府生命工学専攻
著者からのひと言
私たちの身体を守るうえで欠かせない気管の繊毛は、絶えず外界からの異物を運び出す「流れ」をつくっています。この流れが乱れないためには、繊毛が細胞内で正しく配置され、個々が独立した構造を保つ必要があります。本研究では、これまで注目されてこなかった Tppp3 というタンパク質が、繊毛の配置や膜構造に関与していることを発見しました。繊毛の機能を支える細胞内メカニズムを理解することで、さまざまな呼吸器疾患の背景にある問題に新しい視点から迫れると期待しています。

抄訳

気管の内側には、繊毛と呼ばれる毛様構造が密に並び、外から侵入する細菌やウイルスを粘液とともに排出しています。気管の繊毛は1つの細胞から数百本も生えていますが、それらが同じ方向へ揃い、さらに各繊毛膜が互いに融合せず独立して存在する仕組みは、十分に理解されていませんでした。本研究では、細胞骨格の一つである微小管に関連するタンパク質 Tppp3 のマウス呼吸器繊毛細胞における役割を解析しました。その結果、Tppp3が細胞内微小管構造を制御することによって、繊毛の根元にある基底小体の向きと配置を決定づけていることを明らかにしました。さらに、Tppp3は繊毛膜に存在するセラミドの量を調節し、繊毛膜同士の融合を防いでいることを示しました。加えて、Tppp3は嗅覚を担う嗅覚神経細胞でも微小管構造の形成に関与し、ニオイの感知に必須な繊毛形成を支えていることが分かりました。これらの成果は、呼吸器疾患や嗅覚障害の背景にある細胞レベルのメカニズムを理解に新たな視点を提示しています。

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