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2025/12/18

ゼブラフィッシュ胚を用いた組換えヒトノロウイルスの作出

論文タイトル
Recovery of infectious recombinant human norovirus using zebrafish embryos
論文タイトル(訳)
ゼブラフィッシュ胚を用いた組換えヒトノロウイルスの作出
DOI
10.1073/pnas.2526726122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.49 e2526726122
著者名(敬称略)
小瀧 将裕 小林 剛 他
所属
大阪大学 微生物病研究所 ウイルス免疫分野
著者からのひと言
私たちの研究グループは、これまでノロウイルスと同様に急性胃腸炎を引き起こすロタウイルスなど、いくつかのRNAウイルスで人工合成系を開発してきました。本研究では、これまでに培ってきたウイルス人工合成技術に加え、ノロウイルスが安定的に増殖できるゼブラフィッシュに着目することで、感染性ノロウイルスの人工合成に世界で初めて成功しました。今後は、本研究成果をさらに発展させることで、ノロウイルスのワクチンや治療薬の開発へとつなげていきたいと考えています。

抄訳

ヒトノロウイルス(ノロウイルス)は急性胃腸炎を引き起こし、感染者数や社会的損失の大きさから、最も重要な腸管感染症病原体の一つである。しかし、ワクチンや治療薬の開発は依然として遅れている。その主な要因として、実用的なノロウイルスの人工合成系が確立されていないことが挙げられる。
本研究では、ゼブラフィッシュを用いたノロウイルス培養系を活用し、感染性を有するノロウイルスの人工合成系を確立した。まず、ノロウイルスゲノム由来cDNAを培養細胞に導入し、培養上清をゼブラフィッシュ胚へ注入することで、組換えノロウイルスの作製に成功した。作製した組換えウイルスは、ヒト腸管オルガノイドにおいても増殖能を示し、感染性が確認された。さらに、培養細胞を介さずに、ノロウイルスゲノム由来cDNAをゼブラフィッシュ胚に直接注入することで、より効率的な人工合成系の開発に成功した。加えて、本技術を用いることで、レポーター遺伝子挿入ウイルスや異なる遺伝子型間のキメラウイルスの作製が可能であることも実証した。
本研究成果により、ウイルス複製機構の解析やノロウイルスワクチンおよび治療薬の開発が飛躍的に進展すると期待される。

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