抄訳
アントラサイクリン(エピルビシン+シクロホスファミド、累積600 mg/m²)による術前化学療法後、難治性心室頻拍(VT)を発症した50歳代前半のHER2陽性乳癌患者を報告した。失神発作で交通事故・外傷性くも膜下出血を契機にVTが判明し、アミオダロン等でも右室流出路起源VTを反復した。心エコーでは当初LVEF 55%と保たれていたため、原病は制御され予後1年以上と判断し多職種で協議の上ICD植込みを実施したが、直後から持続性洞性頻脈とLVEF 30%への低下を認めた。さらに神経症状が急速に進行し、画像所見に乏しいまま髄液細胞診で髄膜癌腫症と診断、数日で死亡した。剖検では原発巣は治療反応を示す一方、髄膜へのびまん浸潤を認め、心筋は肥大のみで明らかな壊死・線維化を欠いた。本症例は、アントラサイクリン投与中・後の継続的心臓モニタリング、進行癌におけるICD適応判断、神経・自律神経症状出現時の髄膜癌腫症の早期評価の重要性を示す。