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2026/01/22

Piezo1は赤血球と腎臓においてユビキチンリガーゼKelch-like 3を協調的に制御することでカリウム恒常性を司る

論文タイトル
Piezo1 dictates K+ homeostasis through coordinated regulation of the ubiquitin ligase Kelch-like 3 in RBCs and the kidney
論文タイトル(訳)
Piezo1は赤血球と腎臓においてユビキチンリガーゼKelch-like 3を協調的に制御することでカリウム恒常性を司る
DOI
10.1073/pnas.2513222123
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.123 No.3 e2513222123
著者名(敬称略)
石澤 健一、柴田 茂 他
所属
帝京大学医学部附属病院 腎臓内科
著者からのひと言
循環血液中のカリウムの大部分は赤血球の中に存在しており、対照的に血漿中のカリウム濃度は非常に低いレベルに保たれています。本研究では、赤血球と腎臓が連携して血漿中のカリウム濃度を制御するという、これまで見過ごされてきた臓器間シグナルの存在を明らかにしました。腎臓が他の組織の細胞内カリウムの変化を感知し、体外への排泄を調節する新しい仕組みを提示しています。高血圧や電解質異常の理解を一段深め、将来の治療戦略につながる知見として、幅広い分野の研究者に読んでいただきたい研究です。

抄訳

カリウム(K⁺)は心筋や神経系細胞などの機能制御に不可欠なミネラルであり、十分なカリウム摂取は日本人の国民病である高血圧を予防し、心血管疾患リスクを低減させる。その一方で、血液中カリウム濃度の異常(高カリウム血症・低カリウム血症)は重篤な不整脈の原因となり得るため、カリウムの調節機構を正しく理解することは、電解質異常の病態解明や予防・治療戦略の確立に直結する重要な課題である。
体内カリウムの大部分は肝臓や骨格筋、赤血球などの細胞内に貯蔵されているが、腎臓がどのようにこれらの臓器と連携し、血液中カリウム濃度を極めて狭い範囲で厳密に制御しているのかについては、十分に明らかとなっていない。本研究では、機械刺激センサーPiezo1がユビキチンリガーゼKLHL3の活性を制御することで、赤血球から細胞外へのカリウム輸送と腎臓におけるカリウム排泄とが機能的に連動していることを明らかにした。赤血球においては、Piezo1がKLHL3およびその基質であるWNK1を介して細胞内カリウム量を調節し、腎臓では同じ経路によって集合管におけるROMKチャネルを通じた尿中カリウム排泄が制御されると考えられる。本研究により、臓器間シグナルに基づく新たなカリウム調節機構が明らかとなり、カリウム代謝異常に対する新たな治療標的の可能性が示された。

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