本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2018/12/19

ゲート残基変異体の結晶構造で明らかになったカルシウムポンプのE2→E1遷移のメカニズム

論文タイトル
Mechanism of the E2 to E1 transition in Ca2+ pump revealed by crystal structures of gating residue mutants
論文タイトル(訳)
ゲート残基変異体の結晶構造で明らかになったカルシウムポンプのE2→E1遷移のメカニズム
DOI
10.1073/pnas.1815472115
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences National Academy of Sciences
巻号
PNAS vol. 115 no. 50 12722-12727
著者名(敬称略)
恒川 直樹 豊島 近 他
所属
東京大学定量生命科学研究所膜蛋白質解析研究分野 豊島研究室

抄訳

筋小胞体カルシウムポンプは濃度勾配に抗してCa2+を細胞質から小胞体内腔へと能動輸送する膜蛋白質である。Ca2+に対する親和性の改変と2つあるゲートの開閉をATPの加水分解と共役させることで能動輸送を実現する。Ca2+運搬直後のE2状態ではCa2+に対する親和性は低くCa2+に配位する酸性残基はプロトン化している。プロトンが離脱するとCa2+親和性の高いE1状態へと遷移する。このとき非常に大規模で複雑な構造変化が起こるが、その順序等は不明である。細胞質側ゲートであるGlu309はCa2+に配位し、E2状態ではプロトン化していると考えられている。従って、そのGln置換体はE2状態の構造に何ら影響を与えないと期待されたが、X線結晶解析の結果、非常に大規模な構造変化が生じており、細胞質ドメインの配置等はE1に近いことが判明した。一方で、Ca2+配位残基の配置(従ってプロトン化状態)は天然蛋白質のE2状態と完全に同一であった。この結果、何がE2状態の本質的構造要素であるかが判明し、量子化学計算の結果、大規模な構造変化はカルボニル基とプロトン化Glu / Gln間に形成される水素結合の僅かな距離の差によること、Glu309脱プロトン化がE2状態に必須な構造要素を破壊しE1状態への遷移を誘起することが理解された。

論文掲載ページへ