抄訳
成人T細胞白血病(ATL)はヒトT細胞白血病ウイルス型(HTLV-)感染を原因とする難治性の白血病である。また、新規合成レチノイドであるNIK-333は現在、原発性肝がんの術後再発予防効果を検討する臨床試験が行われている。今回、我々はATLの新規治療法を開発する目的で、NIK-333のHTLV-感染T細胞株およびATL患者白血病細胞(ATL細胞)に対する作用を調べた。NIK-333はHTLV-感染T細胞株およびATL細胞の増殖を抑制し、細胞周期のG1期停止とアポトーシスを誘導した。一方、健常人の末梢血単核球の生存に及ぼす影響は軽微であった。NIK-333処理はHTLV-感染T細胞株およびATL細胞のサイクリンD1、サイクリンD2、cIAP2およびXIAPタンパク質の発現を抑制した。さらに、NIK-333はHTLV-感染T細胞株のNF-κB活性を阻害した。免疫不全マウスの皮下にHTLV-感染T細胞株を移植後、100 mg/kgのNIK-333を隔日経口投与したところ、対照群と比べて腫瘍の増殖抑制効果を認めた。今回の我々の研究結果はNIK-333のATL治療薬としての可能性を示すものである。