抄訳
Rho-キナーゼは細胞骨格を調節する鍵酵素であり,血管系や神経系疾患の治療における有望な薬物標的タンパク質である.他の一般的なタンパク質キナーゼと異なり,Rho-キナーゼはアミノ酸配列上,キナーゼドメイン前後の余分のペプチド領域であるN-伸長領域とC-伸長領域をもち,これら両者ともが活性に必須である.しかし,なぜそれらが活性に必要なのかは全く不明であった.今回明らかにした活性型のRho-キナーゼの結晶構造により,一方のN-伸長領域が,もう一方のC-伸長領域を巻き込みながら,二量体を形成することが明らかとなった.この構造の構築により,C-伸長領域にある疎水性モチーフのキナーゼドメインのN-ローブへの結合が可能となり,触媒活性に重要なへリックスCが正しい位置にくる.結合した阻害剤ファスジルは,大きく構造を変化させており,キナーゼドメインの部分的な構造変化をした触媒部位との相互作用も,結果的に,変化している.