抄訳
β-カテニンを介するWntシグナル伝達経路(Wnt/β-カテニン経路)は、動物の初期発生や癌の発症や進展において重要な役割を果たしている。一回膜貫通型のWnt受容体low-density lipoprotein receptor-related protein 6 (LRP6) はAxinと結合し、Wnt依存性のβ-カテニンの蓄積を促進する。しかし、LRP6の細胞内移行の分子機構やその細胞内移行のβ-カテニン経路の活性化における役割については不明である。今回、私共はLRP6がカベオリンを介して細胞内移行し、LRP6の細胞内小胞輸送を制御する分子がWnt-3a依存性のLRP6の細胞内移行のみならず、β-カテニンの蓄積にも必要であることを見出した。また、Wnt-3a刺激によりLRP6はカベオリンと結合すると共にグリコーゲン合成酵素リン酸化酵素-3β (GSK-3β) によりリン酸化され、Axinとの結合が増強した。さらに、カベオリンはLRP6を介してAxinと複合体を形成することにより、Axinとβ-カテニンの結合を抑制した。したがって、カベオリンはLRP6の細胞内移行やWnt/β-カテニン経路の活性化に重要な役割を果たしていると考えられる。