抄訳
コンドロイチン硫酸 (CS) は細胞表面や細胞外マトリックスに存在する直鎖状の硫酸化糖鎖で、コアタンパク質に結合したプロテオグリカン(PG)として存在し、様々な分子と相互作用することにより、細胞増殖・分化や形態形成などの生理作用を担っていることが知られている。CS鎖は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)とグルクロン酸(GlcA)の二糖が数十回繰り返し重合した構造からなる。以前我々は、CS鎖の重合化がコンドロイチン合成酵素-1(ChSy-1) とCS鎖の重合化に必須の因子であるコンドロイチン重合化因子 (ChPF)の複合体により担われていることを報告した。最近、他のグループによってChSy-1との相同性によりコンドロイチン硫酸合成酵素-3 (CSS3)がクローニングされた。そこで、我々はCSS3がChSy-1と同様にChPFと複合体を形成して、CS鎖の重合化に関与しているかを検討した。さらに、HeLa細胞でCSS3を過剰発現あるいはその発現をRNAi法によりノックダウンし、細胞が産生するCS鎖の量を分析した。その結果、CSS3はChPFばかりでなく、ChSy-1とも相互作用し、それらの複合体は共にCS鎖の重合活性を示した。しかしながら、それらの複合体が合成するコンドロイチンの長さには違いが見られた。また、CSS3の発現量とHeLa細胞が産生するCS鎖の量は相関していた。これらの結果より、CSS3もCS鎖の重合化に関与していることが明らかとなり、CSS3をコンドロイチン合成酵素-2 (ChSy-2)と新たに名付けた。さらに本研究により、CS鎖の重合化は、ChSy-1、CSS3およびChPFの様々な組み合わせの複合体に担われていることが示唆された。