抄訳
胃がんの発生機構の仮説として、Helicobacter pyloriに感染すると、胃の正常粘膜は炎症を惹起されて慢性炎症をきたし、萎縮性胃炎を経てがん化すると提唱されている。ドコサヘキサエン酸(DHA)には抗炎症作用があり、赤血球膜中のDHA濃度は、3ヶ月程度のDHA摂取量を反映する生体指標として適用されている。そこで、我々は、このDHA濃度を簡便で安価に測定できる方法を独自に開発し、胃がんの罹患リスクとの関連を検討した。DHA濃度の高値群は、低値群と比較して、胃がんリスクが約50%低かった。さらに、低分化型腺がんの場合と比較すると、DHA濃度の高値群における高分化型腺がんのリスクは顕著に低かった。以上の結果から、抗炎症作用のあるDHAの赤血球膜中の濃度は、胃がんの罹患リスクを検討する有用な生体指標であることが示唆された。そして、赤血球膜中のDHA濃度を高めることにより、胃がんに罹患するリスクの低減が期待される。