抄訳
肝細胞癌(HCC)のリスクにおいて生活習慣の影響は重要であるが、B型(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)感染を厳密かつ詳細に考慮に入れて、それらの因子間の相乗作用を調査したコホート研究は少ない。我々は、長期追跡を行っている成人健康調査コホートにおいて、HCC診断前の保存血清を用いてコホート内症例対照研究を行った。対象は、224 HCC症例と、その症例に性、年齢、都市、血清保存の時期と方法を一致させ、放射線量に基づくカウンターマッチング法によって選択した644対照例である。HCCの多変量相対リスクは、HBV感染者が45.8、HCV感染者が101、HBVとHCVの重感染者が70.7、エタノール換算40 g/日以上の飲酒者が4.36、HCC診断10年前のBMI>25.0 kg/m2の肥満者が4.57で、いずれも有意であった。さらに肝線維化の程度を調整しても、HBVおよびHCV感染と肥満は、独立したリスク要因として残った。また、HCV感染とBMI増加の間に、HCCリスクにおける有意な相乗的交互作用が認められた。HCCの発症予防のために、過剰体重のコントロールは、慢性肝疾患、特にC型慢性肝炎の人において重要であると思われる。