抄訳
急性心筋梗塞症(AMI)は、冠動脈プラークの破綻とそれに伴う血栓性閉塞により発症する。動脈プラークの破裂には、冠動脈の血管壁への単球/マクロファージなどの免疫担当細胞の浸潤およびこれらの細胞の活性化が関与していると考えられている。本研究では、62例のAMIを対象に、冠動脈カテ−テル治療に際し梗塞部位から冠動脈血サンプルを得て、単球を分離し、Toll様受容体4(TLR4)のRNA発現量および蛋白発現量を測定した。その結果、TLR4が末梢血サンプルに比較して明らかに亢進していた。また、梗塞部位から吸引により得られた血栓/プラ−クを免疫組織化学染色したところ、TLR4蛋白発現が陽性であった。さらに、対象例の予後を追跡したところ、再狭窄などの心事故発生群は非発生群に比較してTLR4が高値であった。以上の結果は、心筋梗塞部位でTLR4シグナルが活性化し、この活性亢進は冠動脈硬化促進に関与する因子である可能性を示すものであり、心筋梗塞症の発症機序を考案する上で重要な知見である。