抄訳
ペンドリンは先天性難聴と甲状腺ヨード有機化障害をきたすペンドレット症候群の原因遺伝子である。甲状腺濾胞内膜に存在し、ヨードの甲状腺濾胞内への放出をおこなう。ペンドリンは甲状腺特異蛋白であることから自己免疫性甲状腺疾患の自己抗原となる可能性がある。そこで140人の自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病:100人。橋本病:40人)と80人のコントロール(健常人:50人、甲状腺乳頭癌:10人、SLE:10人、RA:10人)において、血清中の抗ペンドリン抗体を調べた。方法はペンドリンを過剰発現させたCOS-7細胞の抽出蛋白を用い、ウエスタンブロット法で行った。特異性は吸収実験、ペンドリン過剰発現COS-7を用いたフローサイトメトリーで確認した。
その結果、ペンドリン自己抗体は自己免疫性甲状腺疾患の81%に、コントロールの9%に陽性であった(odds ratio=44、p<0.0001)。橋本病においては97%、バセドウ病においては74%に陽性であり、健常人ではすべて陰性であった。抗ペンドリン抗体は自己免疫性甲状腺疾患の新たな自己抗体であり、抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体と同様に診断に有用であることが証明された。