抄訳
多くの動物の胚は発生中に体が前後に長くなっていく。これは、胚細胞が左右から正中面に向けて移動し、互いの間に入り込んでいく収斂と伸張運動 によっている。Wntタンパク質はこの細胞運動に 深く関わっていることが示されてきた。ホヤ胚を使ってWntタンパク質を欠如させたり過剰に産生させたりした結果、尾の中心を貫いている脊索の収斂運動に異常が見られ、細胞が互いの間に入り込ん でいくことができなくなった。また、一部の脊索細胞のみでWntタンパク質を欠如させたり過剰に産生させたりしたモザイク解析の結果は、Wntタンパク質が脊索細胞自体で必要とされ、その作用機構が 細胞自律的であることが示唆された。Wntタンパク質は脊索細胞でオートクライン的に働いているようである。