抄訳
Fas/FasL経路は古くから知られるアポトーシス経路であるが、生体内でどのタイミング、どの細胞集団で働いているかの詳細は不明であった。我々は、細胞増殖の制御を測定するin vitro細胞培養実験系を構築し、さらにはin vivoのアッセイを行い、CD8+T細胞のどの分画が制御活性を持つかを検討した結果、in vitro、in vivoともにCD8+CD122+CD49dlow分画に制御活性が高いことを発見した。Fas分子の働かないlprマウスとFasLの働かないgldマウスを用い、Fas/FasL経路に異常があるとこの制御経路が働かないことをin vitroとin vivo双方において証明した。この結果、Fas及びFasLは活性化T細胞とCD8+CD122+CD49dlow制御性T細胞との間で働き、免疫反応の収束時に活性化T細胞にアポトーシスを誘導して数を減らす作用が重要とわかった。さらに、MHC class I分子を欠損するCD8+T細胞はこの抑制作用を受けないことから、CD8+制御性T細胞が働くにはTCRとMHC class Iとの相互作用が必要であることが証明された。