抄訳
自然免疫系の活性化を誘導するToll-like receptor (TLR)を介した免疫応答は、様々な機構により負に制御されている。しかしながら、TLRを介したシグナル伝達経路の活性化を抑制する機構に比して、その遺伝子発現を負に制御する機構はまだ不明な点が多い。我々は、TLR刺激で誘導される核に発現するIkB分子IkBNSが、NF-kBの活性抑制によりTLR依存性のあるサブセットの遺伝子発現を負に制御していることを明らかにした。IkBNSノックアウトマウス由来のマクロファージや樹状細胞は、TLR刺激により3時間以降に誘導されるIL-6, IL-12p40の発現が上昇していた。一方、TLR刺激により1時間以内に誘導される遺伝子や、転写因子IRF-3を介して誘導される遺伝子の発現は正常と変わらなかった。LPS刺激によるIL-6プロモーターでのNF-kBの活性化が、IkBNSノックアウトマウス由来の細胞では遷延化していた。このことから、IkBNSはTLR刺激後遅れて誘導される遺伝子のプロモーター特異的にNF-kBの活性化を抑制していることが示唆された。さらに、IkBNSノックアウトマウスは、エンドトキシンショックやデキストラン硫酸ナトリウム投与による腸管炎症に極めて感受性が高かった。これらの結果から、IkNSがNF-kBの活性制御を通じたTLR依存性の遺伝子発現の抑制により、炎症反応を負に制御している事が明らかになった。