抄訳
テロメラーゼは、癌細胞選択的に発現し、その不死化能に寄与することから、抗癌剤の分子標的として注目されている。我々は、テロメラーゼの発現制御により、テロメア長を改変した酵母株を調製した。テロメア長の短い酵母株に選択的な増殖抑制作用を指標にして、テロメア・テロメラーゼに作用する化合物を探索した結果、微生物産物ライブラリーから骨格の異なる3化合物、クロラクトマイシン、UCS1025A、ラディシコールを活性物質として同定した。クロラクトマイシンは、酵素系および細胞系においてヒト癌細胞のテロメラーゼを阻害したことから、ヒトテロメラーゼに対して直接作用する化合物であることが明らかとなった。さらに、クロラクトマイシン存在下で癌細胞の長期培養試験を実施した結果、細胞分裂回数に依存したテロメア長の短縮、および、増殖抑制作用が認められた。以上の結果から、クロラクトマイシンは、テロメラーゼ阻害剤としてのコンセプトを満たす新しいリード化合物であり、かつ、酵母のテロメア長に着目したフォワードケミカルジェネティクスアプローチのアッセイ系は、ヒトテロメラーゼ阻害剤の探索系として有用であることが示唆された。