本文へスキップします。

H1

ユサコニュース詳細

USACO News:詳細

2003/08/31:第133号英国の電子ジャーナル事情: コンテンツの提供保障とアーカイブ化におけるJISCの活動
 

英国の電子ジャーナル事情: コンテンツの提供保障とアーカイブ化におけるJISCの活動
近年のコンピューター技術とインターネットの発展に伴い、従来のプリント
ジャーナルの購読から電子ジャーナルの購読へと移行する図書館が、世界的な傾向
として急速に増加している。しかし、通常のプリント購読とは異なり、電子購読で
提供される全てのコンテンツを購読機関が物理的に保管することは困難であり、
また、倒産や合併といった出版社の一方的な都合により、サービス提供が停止してしまう
可能性が拭えないことが常に問題視されてきた。そのため、機関内でのアーカイブを
保障する目的で、プリント購読も併用する図書館が多いのが現状である。

 この問題を解決するため、英国の高等教育財政審議会(Higher Education Funding
Councils)によって資金提供されているJoint Information Systems Committee(JISC)
では、1995年から独自にプロジェクトを立ち上げ(1998年からNESLI、2002年からNESLi2)、
サイトライセンスによる電子ジャーナル購読のアクセスを保障し、さらに図書館が
購読期間を終了した後もコンテンツを保管できるような出版社との購読契約を
模索してきた。

 JISCでは、図書館が出版社と電子購読契約を結ぶ上で最も理想的な契約書
(Model Licence)を作成し、両者間の交渉役を担ってきたが、購読期間終了後にも
コンテンツへのアクセスを保障するアーカイブ化を各出版社に課すのは困難であった。
2002年にModel Licenceでの契約を受け入れた出版社は17社で、5,025誌のジャーナル
がその契約条件で提供されたが、そのうちの8割以上はElsevier、Blackwells、Springer
などの主要6社によって提供されている。比較的小規模な学会出版社などにとって、
自社のサーバからのコンテンツ提供を永久的に保障することは、財政的、技術的に
不可能なのが実状だ。

 そこでJISCでは、コンサルタントを指名し、図書館や出版社からの意見を集めて
具体的な問題点、解決策をまとめる研究活動を行った。本年5月よりホームページ上で
公開している研究報告によると、今後のJISCの活動内容として以下の項目をあげている。

・購読期間終了後のアーカイブ提供に対する、出版社のコンセンサスを高める。
・会議、フォーラムなどを積極的に開催し、図書館と出版社間の意見交換を行う。
・図書館と出版社間の交渉役、およびアーカイブの提供機関として、第3者機関を
任命する。
・OCLC Digital Archive、JSTOR、LOCKSS(スタンフォード大学)などのアーカイブ提供方法
を分析し、英国での新たな提供モデルの構築に努める。

 これを受け、JISCは本年6月、図書館と出版社の新たな交渉役として、Conetent
Complete社を任命した。同時に、アーカイブの提供機関としてマンチェスター大学の
付属機関であるMIMASを任命し、アーカイブ提供における新たなシステムの開発に
取り組んでいる。

 電子ジャーナル購読を行っている図書館にとって、保障されたコンテンツ提供と
そのデータ蓄積は、当然解決されるべき問題である。しかし、従来、プリント媒体を
図書館に納品することでその役割を終えていた出版社に、永続的にコンテンツを
を提供することを義務づけることは非常に困難である。このような問題を解決する
ために図書館が直接に出版社と交渉を進めることは不可能であり、両者の中間に立つ
政府機関に全ての期待が寄せられることになる。JISCの活動はまだ始まったばかりで
あるが、今後の活動が英国に留まらず、世界的なスタンダードモデルとして発展する
よう期待される。

<参考資料>
・JISCホームページ:Archiving E-Journals Consultance-Final Report(PDFファイル)
http://www.jisc.ac.uk/uploaded_documents/ejournalsdraftFinalReport.pdf

・NESLi2ホームページ
http://www.nesli2.ac.uk/

・Content Completeホームページ
http://www.contentcomplete.com/

・MIMASホームページ
http://www.mimas.ac.uk/

ユサコニュース一覧に戻る