抄訳
ヘリコバクター・スイスは豚を自然宿主とし、ヒト胃にも感染するが、ヒト胃からの分離培養の成功例はなく、その病原性には不明な点が多かった。本研究では胃マルトリンパ腫患者を含む複数の胃疾患患者からのヘリコバクター・スイスを人工培地で分離培養することに世界で初めて成功した。得られたヒト胃由来ヘリコバクター・スイスを用いたマウス感染実験により胃での病態発症を確認し、病態組織から菌の再分離にも成功したことから、コッホの原則に従い、ヘリコバクター・スイスがヒト胃における病原細菌であることが証明された。ヒト胃から分離されたヘリコバクター・スイス株のゲノムは豚由来株のゲノムに類似しており、豚に感染しているヘリコバクター・スイスがヒトにも病原性を有する人獣共通感染症の起因菌である可能性が強く示唆された。今後、ヘリコバクター・スイスの病態発症機構の解明や診断法の開発などが期待される。