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2024/07/03

転位のない上腕骨遠位端骨折後の遅発性無腐性壊死

論文タイトル
Delayed avascular necrosis after non-displaced distal humerus fracture
論文タイトル(訳)
転位のない上腕骨遠位端骨折後の遅発性無腐性壊死
DOI
10.1136/bcr-2024-260607
ジャーナル名
BMJ Case Reports
巻号
BMJ Case Reports Vol.17 Iss.6 (2024)
著者名(敬称略)
高木 岳彦
所属
国立成育医療研究センター 整形外科
著者からのひと言
上腕骨顆上骨折をはじめとする上腕骨遠位端骨折後では転位がほとんどないにもかかわらず、疼痛を伴う上腕骨遠位の無腐性壊死が受傷後数年で発生することがあり注意が必要です。転位がなくても関節包の拡張に伴う遠位骨片の圧迫により血液供給が障害されることで、成長段階で骨化が始まる時期に疼痛を伴う壊死が発生するとされていますが、壊死による激痛があっても、時間の経過とともに痛みが徐々に軽減するため、経過観察で十分な場合があります。

抄訳

転位がほとんどないにもかかわらず上腕骨顆上骨折後数年の経過で誘因なく疼痛が生じ、上腕骨遠位の無腐性壊死が認められた症例を経験したので、その臨床的特徴について述べる。
本症例は6歳頃にすべり台から転落し、上腕骨顆上骨折をきたしたが転位がほとんどないため、3週間の外固定ののち可動域訓練を開始し、受傷後3ヵ月で疼痛、可動域制限なくフォロー終了となった。ところが約5年後に外傷歴がないにも関わらず肘の激痛が生じ、単純X線像やMRIにて、上腕骨遠位の中央部分に不整像を認め、経過と共にfish-tail変形と呼ばれる円形の欠損像がみられるようになった。徐々に疼痛は軽減し、発症から約3年半で可動域制限、疼痛は消失し現在に至っている。
転位のない上腕骨遠位端骨折でも関節包の拡張に伴う遠位骨片の圧迫により血液供給が障害され、成長期に骨化が始まると疼痛を伴う壊死を生じることがあるので注意が必要である。

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