本文へスキップします。

H1

国内研究者論文詳細

日本人論文紹介:詳細

2024/12/16

環境フィードバックを考慮した進化ゲーム理論の完全な分類

論文タイトル
A complete classification of evolutionary games with environmental feedback
論文タイトル(訳)
環境フィードバックを考慮した進化ゲーム理論の完全な分類
DOI
10.1093/pnasnexus/pgae455
ジャーナル名
PNAS Nexus
巻号
Volume 3, Issue 11
著者名(敬称略)
伊東 啓、山道 真人
所属
長崎大学 熱帯医学研究所 環境医学部門 国際保健学分野
所属
国立遺伝学研究所
著者からのひと言
環境保全や天然資源の持続可能な管理、抗菌薬の過剰使用と病原体の薬剤耐性化、感染症の拡散とワクチン接種行動など、個々人の行動によって人々を取り巻く環境が変化し、環境の変化によって個人の行動がさらに影響されるような環境フィードバックが、今まさに起こっています。この研究が、環境と人間の行動が相互に影響を与え合う状況の理解に役立ち、両者を望ましい方向へ導くための土台となると期待しています。

抄訳

個人が自身の利益を追求する合理的な行動によって共有資源が枯渇する現象は「コモンズの悲劇」と呼ばれ、ゲーム理論における重要な研究テーマとなっている。コモンズの悲劇を理解するために、個人の行動が環境中の資源量を変え、その資源量の変化が個人の利益に影響する「フィードバック進化ゲーム」の枠組みが最近提唱されたが、資源が豊富な状況において、非協力者が常に増加する「囚人のジレンマ」ゲームにのみ焦点が当てられていた。本研究では、囚人のジレンマ以外の3つのゲーム(チキン・スタッグハント・トリビアル)を含む動態を解析し、完全な分類を行った。さらに、ジレンマ位相平面を用いてゲーム構造の変化を明らかにした。その結果、多様な初期値依存性(双安定性)が生じること、チキン・スタッグハントゲームが周期的な振動を引き起こすことを明らかにした。本研究は、環境フィードバックを含むゲーム理論をさらに拡張していく上で重要なステップとなる。

論文掲載ページへ