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2025/01/29

RNA グアニン四重鎖は神経病理学的なαシヌクレイン凝集を促進する足場を形成する

論文タイトル
RNA G-quadruplexes form scaffolds that promote neuropathological α-synuclein aggregation
論文タイトル(訳)
RNA グアニン四重鎖は神経病理学的なαシヌクレイン凝集を促進する足場を形成する
DOI
10.1016/j.cell.2024.09.037
ジャーナル名
Cell
巻号
Volume 187, Issue 24
著者名(敬称略)
松尾 和哉、塩田 倫史、矢吹 悌 他
所属
熊本大学 発生医学研究所 ゲノム神経学分野
著者からのひと言
本研究では、RNAグアニン四重鎖がαシヌクレイン凝集のキーファクターであり、孤発性シヌクレイノパチー発症に寄与することを示しました。私たちの研究室では、RNAグアニン四重鎖が遺伝性神経変性疾患である脆弱X症候群関連疾患 (FXTAS) の病原タンパク質である FMRpolyG 凝集 (Sci Adv. 2021. doi: 10.1126/sciadv.abd9440.) やアルツハイマー病に寄与する Tau 凝集 (J Biol Chem. 2024. doi: 10.1016/j.jbc.2024.107971.) に寄与することを明らかにしています。これらの結果は、RNAグアニン四重鎖が多くの神経変性疾患発症に寄与する可能性を示唆しています。

抄訳

αシヌクレインの凝集はパーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症などのシヌクレイノパチーと呼ばれる進行性の神経変性を引き起こす。しかしながら、神経細胞内におけるαシヌクレイン凝集のメカニズムは依然として不明である。本研究では、RNAグアニン四重鎖がαシヌクレイン凝集の足場を形成し、神経変性に誘導することを明らかにした。αシヌクレインは、N末端を通してRNAグアニン四重鎖と特異的に直接結合した。Ca2+によってRNAグアニン四重鎖の液-液相分離が促進し、αシヌクレインのゾル-ゲル相転移が促進された。αシヌクレイン凝集シーズである pre-formed fibrilを処置した培養神経細胞では、過剰な細胞質へのCa2+流入を介して、シナプス関連タンパク質をコードするmRNA上で形成されるRNAグアニン四重鎖とαシヌクレインが共凝集することで、シナプス機能障害が誘導された。光遺伝学的手法を用いて人工的にRNAグアニン四重鎖の会合を神経細胞内で誘導すると、αシヌクレインが凝集し、神経機能障害と神経変性が引き起こされた。グアニン四重鎖に作用する薬剤は、RNAグアニン四重鎖の液相分離による会合を防ぎ、それによってαシヌクレイン凝集を抑制し、シヌクレイノパチーモデルマウスにおける神経変性を抑制した。すなわち、Ca2+流入によって誘導されるRNA グアニン四重鎖の会合は、αシヌクレイン相転移による凝集体化を促進し、シヌクレインパチー発症に寄与することが示された。

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