抄訳
薬剤耐性菌の蔓延に伴い、ファージセラピーが注目されている。ファージセラピーは細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を利用した細菌感染症に対する治療法であり、その有効性は多数報告されてきた。一方、治療中に産生されるファージ特異的抗体は体内でのファージの代謝を早めたり、ファージを中和して細菌への感染能を失わせたりするため、ファージセラピーへの影響が懸念されている。ファージ特異的抗体については、in vitroや非臨床試験などで研究が進められており、例えば、ファージを修飾することで抗体に認識されにくくする、血中での半減期を伸ばす、といった研究が報告されている。しかしながら、臨床試験ではファージ特異的抗体の影響について相反する結果が得られており議論が続いている。本総説ではファージ特異的抗体に焦点をあて、具体的な臨床試験の結果を挙げながらファージ特異的抗体がファージセラピーに与える影響について解説する。さらに、ファージ特異的抗体の影響を最小限にする取り組みについても紹介する。