抄訳
背景:甲状腺機能亢進症(TS)の死亡率は10%以上と報告されている。
目的:日本甲状腺学会と日本内分泌学会が提唱した2016年のTS診療ガイドラインの有効性を評価した。
方法:WEBプラットフォーム(REDCap)を用いて、前向きに全国の多施設から患者登録を行ってもらうレジストリ研究を実施した。即ち、新規発症時にTS患者が登録され、その後入院後30日目と180日目に各患者の臨床情報と予後が報告された。
結果:4年間で 110例のTS患者が登録された。APACHE IIスコアの中央値は13点であり、以前の全国疫学調査のスコアである10点よりも高くより重症であった(p=0.001)。それにもかかわらず、30日目の死亡率は5.5%と、前回の全国調査の10.7%に比較して約半減していた。左室駆出率低下、低BMI、ショック、38℃以上の発熱がないことが予後不良因子であった。当診療ガイドラインに従わなかった場合、ガイドラインに従った場合の死亡率より有意に高かった(50% vs 4.7%, p=0.01)。
結論:予後は前回の全国調査よりも良好であり、半減していた。診療ガイドラインに従った場合、死亡率は有意に低値であった。以上より、本ガイドラインはTS診療に有用であることが示された。