抄訳
小倉らは2018年にYlxRタンパク質がDNAに非特異的に結合し、かつ400程度の遺伝子の発現を制御している事を報告した(mSphere 3:10.1128)。つまりYlxRは塩基配列特異的なDNA結合性の転写制御因子ではなかった。2024年にゲッチンゲン大学のグループがYlxRはRNA分解酵素RNase P(タンパク質RnpAとRNA成分RnpBからなるリボザイム)に特異的に結合しその酵素活性を調節していると報告した(NAR 52:1404)。小倉らは種々の遺伝学的解析で、タンパク質の立体構造保持に働くシャペロンDnaJK複合体がYlxRを通じてRNase P複合体の酵素活性を調節している事を見出した。DnaJKが働き新生ペプチド鎖がうまく折りたたまれていると、RNase P活性を抑えるので翻訳進行中のmRNAは分解されない。しかし、何かの不具合でDnaJKが働かず不良タンパク質ができるとRNase Pは活性化されmRNAを分解し、細胞は無駄な仕事を行うエネルギーを節約できる。