抄訳
セラミドの中でもアシルセラミドと結合型セラミドは皮膚バリア形成に重要である。しかし、これらのセラミド産生に関与する遺伝子のノックアウト(KO)マウスは新生児致死であるため、成体マウスにおけるKOの影響は不明であった。本研究では、脂肪酸伸長酵素遺伝子Elovl1のタモキシフェン誘導性コンディショナルKOマウスを作成した。タモキシフェン投与後、アシルセラミド濃度は5日目から減少し始め、10日目には脂質ラメラ形成障害と表皮肥厚が観察された。15日目には結合型セラミドが減少し、経皮水分蒸散量が増加した。その他のセラミド量の変化や脂肪酸部位の短鎖化も観察されたが、それらの時間経過はセラミドの種類によって異なっていた。本研究では、アシルセラミドとタンパク質結合型セラミドが成体の皮膚バリア維持に重要であることを明らかにすると共に、遺伝子発現、表皮形態、セラミド組成の変化など、皮膚バリア機能の低下に対する代償機構を見出した。