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2025/04/18

MALDI Biotyper Siriusによる脂質解析では、Mycobacterium abscessus complexに属する3亜種を識別できなかった

論文タイトル
Lipid fingerprinting by MALDI Biotyper Sirius instrument fails to differentiate the three subspecies of the Mycobacterium abscessus complex
論文タイトル(訳)
MALDI Biotyper Siriusによる脂質解析では、Mycobacterium abscessus complexに属する3亜種を識別できなかった
DOI
10.1128/jcm.01484-24
ジャーナル名
Journal of Clinical Microbiology
巻号
Journal of Clinical Microbiology Vol. 63, No. 4
著者名(敬称略)
吉田 光範 星野 仁彦 他
所属
国立感染症研究所 ハンセン病研究センター
著者からのひと言
抗酸菌細胞壁は脂質に富んでいるため、他の病原体で成功事例のある脂質プロファイリングによる識別を試みた。しかしながら、Siriusシステム付属の解析ソフトウェアや代表的な機械学習法をもちいた分類モデルでは亜種の正確な識別は困難だった。臨床現場における簡易かつ迅速なMABC鑑別には、我々の開発したKANEKA DNA Chromatography MABC/erm(41)が有用である(EBioMedicine 2021;64:103187)。本法はすでに体外診断薬として承認されており、保険適応申請中である。

抄訳

Mycobacterium abscessus complex(MABC)による呼吸器感染症患者は増加傾向にある。マクロライド系薬剤に対する感受性が異なるため、MABC 3亜種の識別が臨床上重要とされている。本研究では、Bruker社製MALDI Biotyper Siriusシステムを用いた脂質プロファイリングを行いMABC亜種識別の有効性を評価した。全ゲノム解析済みの149株に対して、陰イオンモードによる質量分析を実施した。得られたデータに対して、Bruker社が提供するClinProToolsソフトウェアや、代表的な機械学習手法を用いて亜種分類モデルを構築した。本モデルによる分類と、ゲノムデータによる分類との一致率は56%、機械学習による分類精度も50%程度にとどまり、亜種間の正確な識別には至らなかった。したがって、脂質プロファイリング単独ではMABC亜種の識別は現状では困難であり、DNAクロマトグラフィーやGenotype NTM-DRなど、より正確な代替法の導入が臨床現場には必要である。

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