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2025/05/22

概日時計によって制御される細胞の更新が、時間依存的な味覚感受性の変化を調節する

論文タイトル
Circadian clock–gated cell renewal controls time-dependent changes in taste sensitivity
論文タイトル(訳)
概日時計によって制御される細胞の更新が、時間依存的な味覚感受性の変化を調節する
DOI
10.1073/pnas.2421421122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.19
著者名(敬称略)
松浦 徹 他
所属
関西医科大学 病理学講座
著者からのひと言
哺乳類では、概日時計によって制御される細胞周期の進行が、全身の複数の組織や培養線維芽細胞で観察されている。本研究では、概日時計により制御される細胞分裂が、マウスの舌において、II型味細胞の集団に日内変動をもたらすことを示した。これらのII型味細胞数の変動は、苦味、甘味、うま味の知覚に影響を与える。我々の知見は、概日時計による細胞分裂制御が、生理機能の日内リズム的変化、特に高い代謝回転を有する細胞において重要であることを示唆している。

抄訳

概日時計による細胞周期の制御により、臓器や組織で失われた細胞が日内リズムに応じて補充される。本研究では、マウス舌上皮における細胞集団の時間依存的変化をシングルセルRNAシーケンスで解析し、幹細胞/前駆細胞や分化細胞、特にII型味細胞の細胞数の変動を確認した。味蕾幹細胞除去により新規細胞産生を抑制するとこれらの変動は消失した。時計遺伝子Bmal1遺伝子のノックダウンで味蕾オルガノイドでの24時間周期の細胞分裂が消失することは概日周期による制御を示唆する。舌上皮ではアポトーシスのリズムも観察されたが、幹細胞除去で失われ、新生細胞供給が細胞死リズムに必要であることが示唆された。味覚テストでは時間帯によりII型味細胞由来の感受性に変化が見られ、概日時計が日内の細胞数変化を調節することで舌の機能を調節していることが示唆された。

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