抄訳
本研究は、慢性腎臓病(CKD)から末期腎不全(ESKD)への進行予測における血清ビリルビン値の有用性を明らかにし、これを取り入れた新たな予測モデルを開発・検証した。2008〜2018年に九州大学病院でフォローされたCKD患者4103名を開発コホートとし、Cox比例ハザードモデルにより20項目の候補因子から予測寄与度の高い順にeGFR、ビリルビン、蛋白尿、年齢、糖尿病、高血圧、性別、アルブミン、ヘモグロビンの9項目を選定。これらを用いた予測モデルは、時間依存AUC(2年:0.943、5年:0.935)において高い識別能と優れたキャリブレーション性能(予測確率と観察確率の一致度)を示し、外部検証コホート(n=2799)においても良好な結果を示した。結論として、血清ビリルビン値はCKDの進行に対する独立した強力な予測因子であり、血清ビリルビン値を含んだ今回の新規予測モデルは、簡易でかつ精度高くESKD進行を予測可能であり、臨床現場でのリスク評価や治療判断に貢献する可能性が示唆された。