抄訳
植物内生菌は宿主植物の生長を助けたり(共生)、あるいは病気を引き起こしたり(病原)と様々な生活様式を示します。しかしそうした生活様式がどのように制御されているかについてはほとんどわかっていません。今回、植物根に内生して多くの場合共生的にふるまう真菌Colletotrichum tofieldiaeが、「CtBOT6」遺伝子の発現レベルに依存して、共生性から強い病原性まで幅広い生活様式を連続的に示すことを発見しました。論文では、CtBOT6は転写制御因子として菌の二次代謝物生合成遺伝子クラスター「ABA-BOT」を正に制御すること、ABA-BOT由来代謝物の蓄積がゲノムワイドな遺伝子発現調節に関わることで本菌の病原性が発現する可能性が示されました。また、菌感染中の植物側の遺伝子発現解析から、菌の病原性の強さに依存して植物の応答が変化しており、こうした応答が最終的な生活様式に寄与していることが示唆されました。本研究で得られた知見は植物-微生物相互作用における共生性・病原性の連続的な制御機構の理解につながり、さらに、農業現場で共生菌を効果的に利活用する上で基礎的な知見となります。