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2025/06/02

腸管免疫シグナル伝達におけるプロバイオティクス由来の細胞外膜小胞の役割に関する最近の進展

論文タイトル
Recent advances in understanding the role of extracellular vesicles from probiotics in intestinal immunity signaling
論文タイトル(訳)
腸管免疫シグナル伝達におけるプロバイオティクス由来の細胞外膜小胞の役割に関する最近の進展
DOI
10.1042/BST20240150
ジャーナル名
Biochemical Society Transactions
巻号
Biochem Soc Trans (2025) 53 (02): 419–429
著者名(敬称略)
倉田淳志、上垣浩一
所属
近畿大学 農学部 応用生命化学科
著者からのひと言
本総説では、腸内細菌の中でもプロバイオティクスが放出する細胞外の膜小胞を対象に、その特徴と機能、宿主への影響と作用機序を整理して、これらの膜小胞の応用における課題を説明しました。プロバイオティクス由来の膜小胞について総合的に理解を深めることは、ポストバイオティクスとしてこれらの膜小胞を活用する、生体機能の新たな調節技術の開発につながります。

抄訳

一部の腸内細菌は、約20〜400 nmの膜小胞を細胞外に放出する。これらの膜小胞は、細菌の構成成分を受け手の宿主細胞へ運搬しており、多様な細胞応答を惹起する。近年、発酵食品で活用されている乳酸菌、ビフィズス菌、酢酸菌、納豆菌、酪酸産生菌などのプロバイオティクスが細胞外に放出する膜小胞について、物理化学的・生化学的な特性が報告されている。宿主に対する膜小胞の機能や作用機序の解明が、動物・組織・細胞・遺伝子・タンパク質・物質の各レベルで著しく進んでいる。さらにこれらの膜小胞の社会実装を目指して、ヒトや家畜での疾患の改善や既存の治療技術に対する膜小胞の活用について研究報告が増加している。一方、これらの膜小胞をポストバイオティクスとして応用することに関して懸念も提起されている。本総説では、腸管の免疫シグナル伝達を対象にプロバイオティクス由来の膜小胞が担う役割と、これらの膜小胞の応用に関連する課題について議論した。

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