抄訳
細胞内の様々な小器官(オルガネラ)内腔は、固有のpH 環境に維持されており、それが各オルガネラの機能に密接に関わる。本研究は、Oxr1とその相同分子であるNcoa7の同定と解析により、オルガネラ毎に異なるpH調節のメカニズムの一端を明らかにした。Oxr1とNcoa7は、活性型 Rab タンパク質によって、主にゴルジ体およびトランスゴルジネットワーク(TGN) 膜上にリクルートされる。精製タンパク質を用いた生化学実験では、Oxr1とNcoa7が液胞型プロトンポンプ(V-ATPase)の触媒サブユニットに直接作用し、V-ATPaseの活性を阻害することが示された。Oxr1とNcoa7タンパク質の発現が低下した細胞では、ゴルジ体/TGN内腔が酸性化し、さらにそこでの主要な翻訳後修飾であるタンパク質への糖鎖付加が、部分的に阻害されていた。本結果はOxr1とNcoa7が、ゴルジ体/TGN 膜上のV-ATPase活性を抑制することでゴルジ体/TGN内腔の過度の酸性化を防ぎ、ゴルジ体/TGNでの酵素活性に最適な環境を提供することを示している。