抄訳
歯周病とは、歯周組織の慢性炎症から最終的に歯牙喪失の転帰をとる口腔感染症である。また、歯周病を起点に様々な非感染性疾患を誘発、増悪させる可能性が指摘されていることから、歯周病の病態解明と新たな制御手段の開発が強く望まれる。本研究では、実験用ビーグルを用い、3種類の細菌由来外膜小胞カクテル歯周病ワクチン(OMVs)による液性免疫および細菌叢への影響等につき約9ヶ月間観察、調査した。OMVsを3回経鼻投与後に皮下ブースター投与を行ったところ、歯周病原細菌に特異的な口腔のSIgA、血中のIgG等の抗体産生が強く誘導された。この短期間の観察において歯周病原細菌の明白な排除効果は確認されなかったが、当該ワクチン投与により口腔細菌叢を変化させること、ワクチンを投与されたビーグル血清中には、歯周病原細菌に対する阻害抗体が誘導されることが判明した。以上、非げっ歯類ヒト歯周病モデルとして有用なビーグル研究により導かれたこれらの重要な知見は、将来の合理的な歯周病ワクチン法の確立に寄与するものである。