抄訳
ロタウイルスは乳幼児に重篤な胃腸炎を引き起こし、世界ではいまだ年間約13万人の乳幼児がロタウイルス感染により死亡している。ロタウイルスはヒト以外の哺乳類にも感染し、外殻タンパク質VP4およびVP7の遺伝子型は約100種存在するが、その多様性が中和抗体感受性に与える影響は未解明であった。本研究では、ヒトロタウイルスOdelia株を基盤に、様々な遺伝子型のVP4またはVP7を置換したモノリアソータントウイルスを網羅的に作製し、それらの中和抗体感受性を解析した。その結果、VP4よりもVP7の遺伝子型が中和抗体感受性に対して大きな影響を及ぼすことが示された。また、コウモリ由来のG25およびG33などのVP7遺伝子型は、ワクチン接種または自然感染によって誘導される中和抗体に対する感受性が有意に低下していた。さらに、VP7のドメインIが中和感受性を規定する主要な領域であることも示唆された。これらの知見は、ロタウイルスワクチンの改良や将来的な流行株に対する予防戦略の構築に向けた重要な基盤となる。