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2025/06/16

ワクチン接種や自然感染によって誘導された中和抗体に対して感受性の低いロタウイルス遺伝子型の同定

論文タイトル
A rotavirus VP4 or VP7 monoreassortant panel identifies genotypes that are less susceptible to neutralization by systemic antibodies induced by vaccination or natural infection
論文タイトル(訳)
ワクチン接種や自然感染によって誘導された中和抗体に対して感受性の低いロタウイルス遺伝子型の同定
DOI
10.1128/mbio.00897-25
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Ahead of Print
著者名(敬称略)
小瀧 将裕 小林 剛 他
所属
大阪大学 微生物病研究所 ウイルス免疫分野
著者からのひと言
本研究の強みは、私たちが開発したヒトロタウイルスのリバースジェネティクス系を用いて網羅的にリアソータントウイルスを作製した点です。現在ヒトで流行している臨床株に加えて、ヒトでの流行が確認されていない遺伝子型についても検討しました。特にVP7の遺伝子型に関しては、ほぼすべての型の遺伝子を人工合成し、網羅的にウイルスを作製しました。膨大な数のウイルス作製、中和試験の結果、中和感受性を規定する領域を同定することに成功しました。

抄訳

ロタウイルスは乳幼児に重篤な胃腸炎を引き起こし、世界ではいまだ年間約13万人の乳幼児がロタウイルス感染により死亡している。ロタウイルスはヒト以外の哺乳類にも感染し、外殻タンパク質VP4およびVP7の遺伝子型は約100種存在するが、その多様性が中和抗体感受性に与える影響は未解明であった。本研究では、ヒトロタウイルスOdelia株を基盤に、様々な遺伝子型のVP4またはVP7を置換したモノリアソータントウイルスを網羅的に作製し、それらの中和抗体感受性を解析した。その結果、VP4よりもVP7の遺伝子型が中和抗体感受性に対して大きな影響を及ぼすことが示された。また、コウモリ由来のG25およびG33などのVP7遺伝子型は、ワクチン接種または自然感染によって誘導される中和抗体に対する感受性が有意に低下していた。さらに、VP7のドメインIが中和感受性を規定する主要な領域であることも示唆された。これらの知見は、ロタウイルスワクチンの改良や将来的な流行株に対する予防戦略の構築に向けた重要な基盤となる。

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