抄訳
従属栄養性の単細胞真核生物の多くは、飢餓状態を生き延びるための仕組みを進化させてきた。繊毛虫テトラヒメナは水中を活発に遊泳し、微生物を捕食して増殖する。本種では、多数のミトコンドリアが繊毛列に沿って細胞皮層に局在し、繊毛運動に必要なATPを効率よく供給している。飢餓状態になるとミトコンドリアは速やかに減少するが、その仕組みはこれまで不明であった。本研究により、ミトコンドリアの減少はオートファジーによって引き起こされることを明らかにした。ATG8ホモログ5種のうち、TtATG8AおよびTtATG8Bは飢餓に応答して顆粒状やカップ状の構造を形成し、ミトコンドリアと共局在した。光-電子相関顕微鏡法による解析では、TtATG8AまたはTtATG8Bと共局在するミトコンドリアがオートファゴソームに取り込まれ、内部のクリステ構造が破壊されていることを確認した。さらに、TtATG8AまたはTtATG8Bの発現を抑制するとミトコンドリアの減少が抑えられたことから、これら2つのATG8ホモログが飢餓時のミトコンドリア分解に重要な役割を果たすことが示された。