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2025/06/16

繊毛虫テトラヒメナのATG8ホモログであるTtATG8AおよびTtATG8Bは、飢餓によって誘導されるミトコンドリア分解に関与する

論文タイトル
Tetrahymena ATG8 homologs, TtATG8A and TtATG8B, are responsible for mitochondrial degradation induced by starvation
論文タイトル(訳)
繊毛虫テトラヒメナのATG8ホモログであるTtATG8AおよびTtATG8Bは、飢餓によって誘導されるミトコンドリア分解に関与する
DOI
10.1128/mbio.00783-25
ジャーナル名
mBio
巻号
mBio Vol. 16, No. 6
著者名(敬称略)
松田 真弥 中野 賢太郎 他
所属
筑波大学生命環境系 オルガネラ細胞生物学研究室
著者からのひと言
本研究は、繊毛虫テトラヒメナが飢餓状態でミトコンドリアをどのように分解するかを明らかにした初の報告です。オートファジーに関わるTtATG8AとTtATG8Bの役割を解明し、飢餓時に細胞内のエネルギー源を効率的に調節する仕組みの理解が進みました。繊毛虫の飢餓適応やオルガネラ分解に興味のある方におすすめの内容です。

抄訳

従属栄養性の単細胞真核生物の多くは、飢餓状態を生き延びるための仕組みを進化させてきた。繊毛虫テトラヒメナは水中を活発に遊泳し、微生物を捕食して増殖する。本種では、多数のミトコンドリアが繊毛列に沿って細胞皮層に局在し、繊毛運動に必要なATPを効率よく供給している。飢餓状態になるとミトコンドリアは速やかに減少するが、その仕組みはこれまで不明であった。本研究により、ミトコンドリアの減少はオートファジーによって引き起こされることを明らかにした。ATG8ホモログ5種のうち、TtATG8AおよびTtATG8Bは飢餓に応答して顆粒状やカップ状の構造を形成し、ミトコンドリアと共局在した。光-電子相関顕微鏡法による解析では、TtATG8AまたはTtATG8Bと共局在するミトコンドリアがオートファゴソームに取り込まれ、内部のクリステ構造が破壊されていることを確認した。さらに、TtATG8AまたはTtATG8Bの発現を抑制するとミトコンドリアの減少が抑えられたことから、これら2つのATG8ホモログが飢餓時のミトコンドリア分解に重要な役割を果たすことが示された。

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