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2025/06/23

遺伝子ターゲティング効率がMsh2欠損の影響を受けるかどうかはドナーDNA中の相同領域の長さに依存する

論文タイトル
Homology-arm length of donor DNA affects the impact of Msh2 loss on homologous recombination–mediated gene targeting
論文タイトル(訳)
遺伝子ターゲティング効率がMsh2欠損の影響を受けるかどうかはドナーDNA中の相同領域の長さに依存する
DOI
10.1073/pnas.2508507122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.24
著者名(敬称略)
斎藤 慎太 足立 典隆 他
所属
横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 分子生物学研究室
著者からのひと言
細胞のDNAを自在に改変できるゲノム編集技術はさまざまな分野で注目されており、その科学的重要性と社会的ニーズの高さは2020年のノーベル化学賞(CRISPR/Cas9)や2007年のノーベル医学生理学賞(遺伝子ターゲティングとノックアウトマウス)からも明らかです。今回の成果は、ゲノム編集やDNA修復の研究に重要な示唆を与えると考えられます。

抄訳

正確なゲノム編集(相同組換えに依存した遺伝子ターゲティング)に及ぼすミスマッチ修復の影響は40年以上明らかにされていなかった。そこで、さまざまな長さのドナーDNAベクターとさまざまな種類のヒト細胞変異株を駆使して遺伝子ターゲティング効率を調べたところ、ベクター中の相同領域が短くなるにつれミスマッチ修復タンパク質Msh2の影響を強く受けることがわかった。この現象は相同組換えを介した反応でのみ観察され、相同組換えを介さない反応(著者らが昨年発見したメカニズム;Nat. Commun., 2024)では相同領域の長さとは無関係に弱い影響を受けることもわかった。以上の結果から、遺伝子ターゲティングによる正確なゲノム編集において相同領域の短いドナーDNAベクターを使用すると、ベクター中の非相同領域の存在によって相同組換えを介した遺伝子ターゲティングの効率が低下することが明らかになった。

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