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2025/06/23

ショウジョウバエGTSF1ホモログTppによる大量のpiRNA産生は、Aubergineの局在と生殖質の形成を保証する

論文タイトル
Abundant piRNA production mediated by the Drosophila GTSF1 homolog Tpp ensures Aubergine localization and germ plasm assembly
論文タイトル(訳)
ショウジョウバエGTSF1ホモログTppによる大量のpiRNA産生は、Aubergineの局在と生殖質の形成を保証する
DOI
10.1073/pnas.2419375122
ジャーナル名
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻号
Proceedings of the National Academy of Sciences Vol.122 No.24
著者名(敬称略)
喜納 寛野 中村 輝 他
所属
熊本大学発生医学研究所
著者からのひと言
本研究では、スクリーニングにより同定した新規母性因子Tppの解析を通じて、生殖細胞の形成とゲノム防御をつなぐ新たな仕組みを明らかにしました。Tpp(Tiny pole plasm)という名前は、変異体で生殖質(pole plasm)が小さくなる表現型にちなんで命名しました。

抄訳

生殖細胞は、卵や精子など配偶子を作る細胞種であり、世代を超えて種のゲノムを維持する必要がある。PIWI相互作用RNA(piRNA)は、過去にゲノムに侵入したトランスポゾンの情報を利用してトランスポゾンを抑制し、それによってゲノムの維持に貢献している。ショウジョウバエの卵巣では、PIWIタンパク質の1つであるAubergine (Aub) は、生殖細胞におけるトランスポゾンの抑制だけでなく、生殖質の形成と、それに続く子孫の生殖細胞系列へのpiRNAの分配にも関わる。今回我々が同定した新規母性因子Tppは、piRNA産生を促進する因子であり、Tppを欠く卵巣では、piRNAの産生が減少してしまう。piRNA減少により、Aubの生殖質への局在が著しく低下し、その結果生殖細胞の形成が不全となった。一方、Tppを各卵巣においても、ほとんどのトランスポゾンは抑制されたままであった。すなわち、生殖細胞は、トランスポゾンの抑制に必要なレベルを超える量のpiRNAが産生されたときにのみ形成される。このような巧妙なメカニズムにより、生殖質にはトランスポゾン情報を包括的にカバーするのに十分なpiRNAが集積し、子孫の生殖細胞におけるゲノムの完全性が保証される。
プレスリリースに用いたeyechtch figure

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